社長インタビュー

「軌跡、そして」

「告白」で、「波瀾万丈の起業するまで」をお話しましたが、起業からの11年を振り返ってみたいと思います。

始めた当初はもちろん企業経営に対して不安もありましたが、苦労したという感覚はありませんね。
逆境を楽しめる性格なのかもしれません。
業績は、すべて順調だったかというとそうではなく、2006年から2007年に大きな落とし穴がありました。
当時は、大手企業が後継者として若手を抜擢し、経営刷新をする「後継者ブーム」でした。私の周りの経営者仲間からの勧めもあり、後継者を育てようと、30代の社員を役員に抜擢して経営を任せ、私自身は、事業拡大を狙って大阪・仙台・広島に立ち上げた各支店・営業所の運営に奔走しました。会社を大きく発展させる事が、クライアントにとってもプラスになると考えていました。
しかし、地方都市の支店・営業所が売り上げを伸ばす一方で、新役員が担当した首都圏エリアの売上が大幅に落ち込んでしまい、好調な地方都市の売上をもっても、カバーし切れないものでした。2000年の立ち上げから5年間は順風満帆でしたので、ここでの大幅な売上ダウンは経営的にダメージが大きく、若手役員の抜擢についても「地位が人を創る」とはならず、残念ながら良い結果を生みませんでした。
まさに、この2年間で経営者として「何か」を得たような気がします。
これを機に、2007年春からは、「拡大」から「集中」へと業務形態の転換を図るため、各支店・営業所を閉鎖し、東京を中心とした関東圏のみで展開する方向へと軌道修正しました。2008年4月には、最後のコストカットとしての本社を移転しました。世の中は「拡大基調」にありましたが、当社ではその逆の「縮小」が功を奏し、同年の秋のリーマンショックの影響は全く受けずに済みました。逆に、支店・営業所を閉鎖して余分な販管費をかける必要もなく、順調に売上・営業利益を伸ばすことができたのです。
取引銀行の担当者から、『武田社長は強運ですね』と言われたこと、それと同時に「まだ生かされている」と実感したことを昨日のことのように思い出します。「運」も実力のうちなのでしょうかね(笑)。

「T-brand」派遣スタッフの特長

当社が派遣スタッフ登録の際に重要視しているのは、「スキル」だけではなく、責任感を持って仕事を遂行できるのか、問題解決能力があるのか、コミュニケーション能力があるのかといった、その人の持っている「資質」の部分です。スキルは経験を積むことで伸びますが、個人個人が持っている資質は変わりません。そういう意味では、当社の面接にはかなり厳しい基準があると言ってもいいでしょう。
通常、派遣で仕事をしている人は、個人と派遣会社とのつながりで仕事をしているという感覚でいると思います。個人のスキルを武器に様々な企業で活躍するという構図ですが、当社の派遣スタッフは、個人のスキルに加え、「T-brandからの派遣である」ということにプライドを持って就業していると本社スタッフから聞いています。同じ派遣先企業で、異なる部署に配属されているスタッフ同士でも「T-brandチーム」として、密にコミュニケーションが取られています。スタッフ個人の能力を発揮しつつ、チームとしての力もある。ほかの派遣業者との違いはそこにあるのではないでしょうか。
また、派遣先であるクライアントとは長年にわたって信頼関係を築いていることもあり、社長である私に直接声が届きます。派遣スタッフの声も私に直接届くようになっていて、派遣スタッフ全体の状態を把握できます。社長と派遣スタッフの距離がこれだけ近い派遣会社もあまりないのではないでしょうか。
派遣スタッフから人生相談を受けたりする事もあるんですよ。

「量より質の派遣」へのこだわり

世間では、グッドウィルの問題(労働者派遣の労務管理をめぐる様々な問題)、また、独身者の増加や少子化、国際競争力の低下など、風評によって人材派遣業に対しての風当たりが強くなっているように感じられますが、当社では全くと言って良いほど影響は受けていません。
2006年には労働者派遣法の改正で製造業派遣も認められるようになり、お客様を含め、周りからも勧められましたが、当社では製造業派遣は行わず、創業当初から営業職の派遣をメインにしてきました。確かに、製造業派遣を行うのであれば、派遣スタッフの人数を増やし、それに合わせて本社スタッフも拡充して、会社の規模は大きくなったかもしれません。でも、そこで製造業派遣に手を出さなかったのは、経営者としての直感ですね。それは、徹底した情報収集をし、当社の色に合っているか否かを判断した「経営感覚」からのものだと思っています。これに加えて「運」が味方してくれたと思います。そして、その選択の根底にあったのは、あくまでも「量」より「質」を重視した派遣へのこだわりがあったのです。私には、専門職、要はプロフェッショナルを派遣するのが「派遣業」の本来の形だと思いますし、量より質を求めて、いまは大きな売り上げにはならなくても、信用と確実性を伸ばすことが必要だと思ったんです。

T-brand の未来

この時代、あまり先は読めないですが、とりあえず3年先を見据えています。
派遣登録の面接では、本当に仕事ができる人かどうかを見ています。そういう意味では、もしかしたら他の派遣会社よりも厳しい質問をすることがあるかもしれません。ですがそれにより、質の高い、良い人材がそろっている自信はあります。相対的に見て、やはり良い人材は首都圏に集まってきますから、エリアの拡大は行わず、一都三県の関東圏をメインに展開することは変わりませんし、おおよその売上の目安も想定できています。
「T-brand」の理想の形、最終形は考えていません。現状に満足することは生涯ないでしょうね。コントロールできる範囲で企業規模を大きくするということも大事なのですが、常により良い質を求めて走り続ける会社でありたいと思っています。

この11年間は、自ら創った会社に、私が社長として育ててもらったという感覚です。これからの「T-brand」は、ここまで経営者として培ってきた経験と感覚を踏まえ、新たな出発をする気持ちで取り組もうと思っています。また、「T-brand」が「成人の日」を迎えるまで、どんな困難があっても、創業者として守り抜きます。
まだ詳細は言えませんが、新しい事業を立ち上げる構想も持っています。3、4年後にはこれまでとは異なるビジネスをしていると思いますよ。
これからの10年が楽しみです。

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